2017年12月 「ある日の出来事…」

    ランチルームで子ども達とご飯を食べているとき、
    私よりも先に来て食べ終わった年少の女の子が先生と話していました。
    「〇〇ちゃんごちそうさまできたんだね。お部屋に上がる前にもう一度自分の食べていたところが綺麗になっているか見てみようか」と言って、
    その女の子が食べていた机に向かいました。
    そこで食べこぼしを見つけると「次の人も気持ちよく使えるように綺麗にしよう」と
    先生が机の上にある“おこぼし紙(小さく切った新聞紙)”を手に取り、
    食べこぼしてしまった物を指でつまみ、そのおこぼし紙に包んで捨てました。
    「綺麗になったね。」と言ってその日は、お昼寝の準備をしにお部屋に戻りました。

    そして次の日同じようにランチルームで食事をしていると、
    その女の子がまた私より先に食べ終わり片付けをすませていました。
    食器を全て片付け終えるとその子はもう一度自分の机に戻り、
    前の日に先生がやっていたように食べこぼしを拾い始めました。
    前の日に教えてもらった通りにやっているな〜と思って見ていると、
    次に椅子をひき机の下まで見はじめました。
    またそれだけでは終わらず、こぼし紙を持ったまま空いている机の上やその下をくまなく見てゴミを拾いはじめたのです。
    誰かに何かを言われてやりはじめたのではなく、自分が教えてもらって出来るようになったことを黙々と行いはじめました。
    そしてたくさん拾っている姿を見た保育士が「〇〇ちゃんお友達の食べるところいっぱい綺麗にしてくれたね。ありがとう。」という
    言葉をかけられていました。
    その時の女の子の満足そうな表情はとても達成感を感じているようでした。

    その女の子は教えてもらい出来るようになったことを、さらに自分の動き(習慣)として
    習得するためにただその動きを繰り返して(敏感期)いましたが、その姿が結果的に“次に使う人のため”になり、
    誰かに「ありがとう」と言ってもらうことで自分以外の誰かを幸せにすることを喜びに感じるまでに至ったのです。

    モンテッソーリ教育では「子どもはできないのではなく、やり方を知らないだけ」と言われています。
    その中で関わりとして大切にしていることがあるので、ここでご紹介します。

    ① 過程を大切にする
    大人と子どもは何かをするときの目的が違います。
    掃除をとっても、大人は掃除用具を使い効率よく綺麗にすることを目的にします。
    子どもは効率は関係なく、一つずつ指でつまみ集めたりします。
    これは“過程を大切”にするのが目的だからです。

    ② 子どもの動きをよく見る(観察する)
    目の前の子どもが何をしているのかよく見ることで、繰り返し行っていること、興味を示していることが分かります。
    「なぜそうするのか?」「何に困っているのか?」を見ることで手助けするポイントが分かってきます。

    ③ 子どもはよく見ています
    大人や友達の動きをよく見ています。
    どうやったら自分は上手く出来るのかを知りたいですし、「自分自身がその動作を行う上で主人公」になりたいからです。
    何かを教えるときにはまず大人が黙ってその姿を目の前で見せてあげましょう。

    ④ 教えるときにはコツがあります
    子どもには大人の動きが8倍速で見えています。
    また、一度にいろいろな情報があると混乱してしまうので、
    まずは欲張らずに一つのことを大人が思っているよりもかなり遅い速度でやって見せてあげましょう。
    そのときに言葉は必要ありません。
    まずはゆっくりした動作で丁寧に正確に見せます。
    その動きを理解してから次のことを順序立てて教えてあげます。

    ⑤ 何度も繰り返し行う
    大人では信じられないことですが、子どもは一つのことに集中してそれを何度も、何日も繰り返し行うことがあります。
    それはその子が納得し自分で終わりを決めるまで何度も繰り返されます。
    その繰り返しが「充実感」や「自信」につながり次のステップに進む意欲になります。

    子ども達の頭の中ではこのようなことが日々繰り返されています。
    そこには私たち大人の関わりもとても大切になってきます。
    毎日の忙しさについ「早く!」「急ぎなさい!」と言いがちになってしまいますが、
    少し余裕があるときには子どもの姿を振り返り、今はどんなことに興味があるのかな?と
    子どもの視点になってみると、大人にも新しい発見があるかもしれませんね。

    馬場 麻美

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