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石の上にも3年?

「石の上にも3年」皆様ご存知の昔からあることわざです。先日「石の上にも3年って言うからさぁ。2年で辞めるのは・・・」と話している声を聞き、「ん?」と思ったことがありました。

 

■「石の上にも3年」とは

 

冷たい石の上でも3年も座りつづけていれば暖まってくる。がまん強く辛抱すれば

必ず成功することのたとえ              引用:デジタル大辞泉(小学館)

 

この場合の3年というのは3年間ということではなく、長い年月を表した比喩表現です。本来は努力を重ねればいつか物事を成し遂げられるというポジティブなことわざですが、「嫌なことでも3年は続けないと芽が出ない」とか「最低3年間は頑張らないと何も分からない」など、誤った使い方をされていることがあります。思い返してみると、私の周囲でも「3年は頑張れ」という言葉が飛び交っていました。そういうこともあってか、以前は短い勤続年数で転職するのは、あまりいい受け止め方をされないこともありました。

 

■我慢は美徳か

厚労省「新規学校卒業者の就職離職状況調査」によると、平成6年までは新卒で就労して3年以内に辞める人の割合は4人に1人でしたが、平成7年以降はずっと3人に1人という状況です。平成7年は阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件、不良債権で金融機関の破たんが起こり、景気低迷で就職難が続いた年でした。その頃はそれまでの終身雇用が揺らいできたという背景があったかもしれませんが、近年はステップアップの転職も増えているようです。

 

■時間の流れの速さ

現代は年々時間の流れが速くなっていると言われています。テクノロジーの進歩でそれまで1時間かかっていた仕事が5分でできるようになったり、インターネットの普及で瞬時に世界中の情報が得られるようになりました。スマートフォンの普及もそれに拍車をかけたのでしょう。ですので以前の3年が今では5年、10年に相当するのかもしれません。そう思うと、このたとえを用いて忍耐について説くことは、最近の風潮にはそぐわなくなっているのかもしれないと感じます。

 

■見極める力、選ぶ力、決める力etc.

嫌なことでも我慢して続けたほうがいいのか、さっさと見切りをつけて新しいことにチャレンジしたほうがいいのか。続けたからこそ得られるものもありますし、変えたからこそわかることもあります。どちらがいいのか一概には言えません。ただ、自分が本当にやりたいことは何か、自分の強みは何かなど、客観的に自分を見つめ、自分が後悔しない道を考えることが重要なのかと思います。

そのような人生の局面で自分の進む道を見極められる力の土台作りのため、園では、自分の好きなことを選ぶ、何をするか決める、考えて行動するなどの経験を積み重ねられるようにしています。今年度マジョラムクラスでは、日々のクラスでの自由活動のほか、週に3日縦割りで選択制の活動を取り入れています。「自分で選ぶ」経験が、将来一人ひとりの豊かな人生を支える力になるようサポートしていきます。                              (飯塚)